あれが吾が手に

「あれが吾が手に入ったらなァ」
 だが鉄格子はどこで打ちつけてあるのか、ビクリとも動かない。だから格子を外して降りようたって簡単にはゆかない。見す見す宝を前にして指を銜えて引込むより外しかたがないのであろうか。帆村は歯をぎりぎり噛みあわせて残念がった。
「焦ってはいけない」と、帆村は自分自身に云いきかした。「それより落着いて考えるのだ。人間の智慧を活用すれば、不可能なものは無い筈だ」
 ジリジリとする心を静めて一分、二分、それから考えた。――
「うん、そうだ。……こいつだッ」
 何を思ったか、彼は下に着ていた毛糸のジャケツをベリベリと裂いた。そして毛糸の端を手ぐって、ドンドン糸を解いていった。それを長くして、二本合わせると、手早く撚りあわせた。そしてポケットからナイフを取出すと、その刃を出し、手で握る方についている環に、毛糸の端をしっかりと結えた。そうして置いて、ナイフを格子の間からソロリソロリと下に下した。
 毛糸を伸ばすと、ナイフはスルスルと下に降りて、遂に手紙の上に達した。
「さあ、これからが問題だ!」

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