すこし猫背の太った身体

 老紳士はすこし猫背の太った身体の持ち主だった。頭の上にチョコンと小さい中折帽子をいただき、ヨチヨチと歩いてくる。そして毛ぶかい頤鬚や口髭をブルブルふるわせながら、低声の皺がれ声で何かブツブツいっていた。どうやら警官の取扱いに憤慨しているらしかった。
「……どうもお前らは分らず屋ばかりじゃのう。早く分る男を出せ。天下に名高い儂を知らないとは情けないやつじゃ」
 と、老紳士はプンプンしていた。
「おお、あれは鴨下ドクトルじゃないか」
 と正木署長は、意外の面持だった。
「儂を知らんか、知っとる奴が居るはずやぞ。もっと豪い人間を出せ」
「おお鴨下ドクトル!」
「おお儂の名を呼んだな。――呼んだのはお前じゃな。うむ、これは署長じゃ。この間会って知っている。お前は感心じゃが、お前の部下は実に没常識ぞろいじゃぞ。儂のことを蠅男と呼ばわりおったッ」
 老紳士は果然鴨下ドクトルだったのだ。ドクトルはなおも口をモガモガさせて、黒革の手袋をはめた手に握った細い洋杖をふりあげて、いまいましそうにうちふった。

外反母趾の治療はニューヨーク発信・福岡先生の直営サロン yourdomain.com ? View forum - Your first forum
書き込みはまだありません。