この室内に向けて

この室内に向けて昼も剥き出しのシャンデリアが煌々と照らしている。その漂白性の光はこの座敷を洞窟のように見せる許りでなく、光は客が箸で口からしごく肴の骨に当ると、それを白の枝珊瑚に見せたり、堆い皿の葱の白味に当ると玉質のものに燦かしたりする。そのことがまた却って満座を餓鬼の饗宴染みて見せる。一つは客たちの食品に対する食べ方が亀屈んで、何か秘密な食品に噛みつくといった様子があるせいかも知れない。
 板壁の一方には中くらいの窓があって棚が出ている。客の誂えた食品は料理場からここへ差出されるのを給仕の小女は客へ運ぶ。客からとった勘定もここへ載せる。それ等を見張ったり受取るために窓の内側に斜めに帳場格子を控えて永らく女主人の母親の白い顔が見えた。今は娘のくめ子の小麦色の顔が見える。くめ子は小女の給仕振りや客席の様子を監督するために、ときどき窓から覗く。すると学生たちは奇妙な声を立てる。くめ子は苦笑して小女に
「うるさいから薬味でも沢山持ってって宛てがっておやりよ」と命ずる。

木のがま口 痒いところに手が届く:エクスプロア・ブログ