チリチリチリ、チリン

 チリチリチリ、チリン。
 突然、電鈴が鳴った。電話だ。
 それは夢でも幻想でもなかった。たしかに室内電話が鳴ったのである。深夜の電話! 一体どこから掛ってきたのであろう。
 帆村は受話器をとりあげた。
「帆村君かネ」
「そうです。貴方は誰?」
 帆村の表情がキッと硬ばり、彼の右手がポケットのピストルを探った。
「こっちはお馴染の蠅男さ」
「なに、蠅男?」
 蠅男がまた電話をかけてきたのだ。村松検事の声とは全然違う。帆村は、蠅男に対する恐ろしさよりは、この蠅男の電話を、ぜひとも水田検事に聞かせてやりたかった。
「どうだネ、帆村君。今夜の殺人事件は、君の気に入ったかネ」
「貴様が殺ったんだナ。塩田先生をどういう方法で殺したんだ。村松検事は貴様のために、手錠を嵌められているんだぞ」
「うふふふ。検事が縛られているなんて面白いじゃないか」と蠅男は憎々しげに笑った。「どう調べたって、検事が殺ったとしか思えないところが気に入ったろう。口惜しかったら、それをお前の手でひっくりかえしてみろ。だが、あれも貴様への最後の警告なんだぞ。この上、まだ俺の仕事の邪魔をするんだったら、そのときは貴様が吠え面をかく番になるぞ。よく考えてみろ。もう電話はかけない。この次は直接行動で、目に物を見せてくれるわ。うふふふ」
「オイ待て、蠅男!」
 だが、この刹那に、電話はプツリと切れてしまった。

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