帆村探偵は、どんなにして

 帆村探偵は、どんなにして次の朝を迎えたのかしらない。
 とにかく彼が、室を出てきたところを見ると、普段から蒼白な顔は一層青ざめ、両眼といえば、兎の目のように真赤に充血していた。よほどの苦労を、一夜のうちに嘗めつくしたらしいことが、その風体からして推しはかられた。
 帆村は、すぐさま村松検事の留置されている警察署へゆくかと思いの外、彼はその前を知らぬ顔して、自動車をとばしていった。そして到着したところは、阪急の大阪駅乗車口であった。
 彼はそこで大勢の人をかきわけ、大きな声で宝塚ゆきの切符を買った。
 急行電車に乗りこんだ彼は、乱暴にも婦人優先席にどっかと腰を下ろすや、腕ぐみをして眼を閉じた。そして間もなく大きな鼾をかきだすと見る間に、隣に着飾った若奥様らしい人の肩に凭れて、いい気持ちそうに眠ってしまった。
 車掌が起こしてくれなければ、彼はもっと睡っていたかも知れない。彼は慌てて、宝塚の終点に下りて、電柱の側らで犬のような背伸びをした。

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