ぼくほど不幸なものが

 ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。
 そんなことをいい出すと、ぜいたくなことをいうなと叱られそうである。しかし本当にぼくくらい不幸なものはないのである。
 ぼくをちょいと見た者は、どこを押せばそんな嘆きの音が出るのかと怪しむだろう。身体はぴかぴか黄金色に光って、たいへんうつくしい。小さい子供なら、ぼくを金だと思うだろう。ぼくをよく知っている工場の人たちなら、それがたいへん質のいい真鍮であることを一目でいいあてる。実際ぼくの身体はぴかぴか光ってうつくしいのである。
 ぼくは、或る工場に誕生すると、同じような形の仲間たちと一緒に、一つの函の中に詰めこまれ、しばらく暗がりの生活をしなければならなかった。その間ぼくは、うとうとと睡りつづけた。まだ出来たばかりで、身体の方々が痛い。それがなおるまで、ぼくは睡りつづけたのである。

脱毛 仙台 挨拶は時の氏神
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