僕が一年から二年へ越える時に

 僕が一年から二年へ越える時に、虎公が高等小学を終えた。
 虎公の家は、虎公とお婆さんと二人きりで、どうして食っていたのか知れないが、相変らず貧乏だった。虎公はしきりに中学校へはいりたがっていたが、どうしても駄目らしかった。僕は虎公が可哀そうで堪らなかった。そしてとうとう一策を案出してそれを虎公に謀った。それは僕が使った本はみな虎公にやるから、虎公はその伯父さんから月謝だけ出してもらって、学校へ行くがいいというのだった。
 虎公は非常に喜んで、すぐそれをお婆さんに話して、伯父さんに相談に行った。伯父さんというのは典獄を勤めていた。
 が、虎公の運命はもう、そのよほど以前にきまっていたのだった。彼は伯父さんの家から泣いて帰って来た。中学校へはいりたいなぞという非望を叱られて、近々に函館のある商店へ小僧に行くようにと命ぜられて来たのだ。

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