良吉《りょうきち》は
その日《ひ》は、あつい、あつい日《ひ》でした。そこは大《おお》きなビルディングが、立《た》ち並《なら》んでいて、自動車《じどうしゃ》や、トラックや、また自転車《じてんしゃ》が往来《おうらい》して、休《やす》むようなところもなかったのです。
そのうち、濠端《ほりばた》へ出《で》ると、車《くるま》の数《かず》も少《すく》なくなり、柳《やなぎ》の葉《は》が風《かぜ》になびいていました。そしてガードの下《した》に、さしかかると、冷《つめ》たい風《かぜ》が吹《ふ》いてきて、躰《からだ》がひやりとしました。
「ここで、すこし休《やす》んでゆこう。」と、良吉《りょうきち》は、自転車《じてんしゃ》を止《と》めて、さながら、坑《あな》のあちらの、ちがった、世界《せかい》からでも吹《ふ》いてくるような、風《かぜ》を胸《むね》に入《い》れていました。
暑《あつ》い日《ひ》に、働《はたら》いている人々《ひとびと》が、たまたま、こんな涼《すず》しいところを見《み》いだしたときの喜《よろこ》びというものは、どんなでしょう。それは、一通《ひととお》りではありません。
船橋 歯科 Send the good life ? トップページ